1.概要
研究用原子炉(KUR)の貫通孔(T-1)に設けられた、核分裂生成物をオンラインで質量分離する装置(ISOL:Isotope Separator On-Line)である(図1)。アルミニウム製チェンバーに封入された235U をT-1孔内において熱中性子照射し、生成された核分裂生成物をガスジェットにより迅速に移送し、イオン化を経て、質量分離された不安定原子核ビームを得る(図2)。ISOLには2本のビームラインがあり、質量分離された不安定原子核は、その末端に設置されたテープ状の収集装置に集められた後、放出される各種放射線を測定することにより、その核構造研究や核データの取得ができる。また、別のビームライン末端には、試料中に不安定核種を注入するための静電型後段加速装置が設置されている。


2.特性
235Uの熱中性子による核分裂反応を利用しているため、ターゲットチェンバー内で生成される不安定原子核は、図3で示されるように、質量数A=90と140に極値を持つ領域(黄色)内の核種であり、現在、表面電離型イオン源がインストールされているため、その内、アルカリ、アルカリ土類、希土類元素の短寿命核分裂生成物とそれらの娘、孫核種(赤色)を高強度で利用できる。 ターゲットチェンバーに50 mgの93%濃縮235Uが封入され、T-1孔中心部において3×1012 neutrons/cm2/s(KUR 5 MW運転時)の熱中性子で照射されることにより、2.2×1011 fissions/sの核分裂反応が起こり、例えば140Csの場合、ビームライン末端で毎秒108個のビーム強度が得られている。また、核分裂収率に拠るが、半減期が0.3 s程度の短寿命核種まで利用可能である。
ビームライン(BL-1)末端には、テープ型収集装置が設置されており、質量分離された不安定核ビームは、アルミニウムが蒸着されたマイラーテープ(幅;12.5 mm、長さ;約1,000 m)上に収集された後、放射線検出器が置かれた場所まで移動させることができ、これを任意のサイクルで自動的に繰り返すことができる。また、ビームライン(BL-2)末端の静電型後段加速装置により、質量分離されたイオンを再加速し、トータル100 keV程度のエネルギーで試料中に注入できる。
その他の付帯機器として、検出効率20%~60%のGe半導体検出器や低エネルギー用Ge半導体検出器(GMX、LOAX、LEPS)及び内部転換電子測定用Si半導体検出器とこれらを有効に利用するための十分なモジュール(NIM規格)を有し、さらに、マルチチャンネアナライザー(MCA)及び複数の検出器からの信号をevent by eventで記録できる多次元データ収集装置も用意されており、放射線計測のための環境が整えられている。

3.条件
・KURの利用運転週単位(月曜日(実験準備日)~木曜日)で、実験者が必要なビームラインを占有し、利用することを原則とする。
・実験で用いる核種・強度については、事前に、装置担当者に相談すること。
・BL-2における不安定核ビームの注入については、ビームスポットが直径5 mm以下であり、一度に、広い試料表面への均一な照射はできない。また、基本的に、試料は直径20 mm以下とする。
4.操作者
本装置を使用する実験者は、予め、実験内容について装置担当者と打合せを行い、装置担当者が実施する装置の取扱いに関する教育訓練を受講する。ISOL運転中においては、ISOLの操作や保守管理に精通した者の内から、ISOL操作有資格者(若しくはISOL特別操作有資格者)を認定し、操作・当番を担当する。
5.取扱方法
KUR-ISOLを操作する場合、ISOL操作有資格者及びISOL特別操作有資格者は「オンライン同位体分離装置(ISOL)の取扱い(要領)」及び「KUR-ISOL INSTRUCTION MANUAL」を基に操作しなければならない。また、運転中においては、ISOL当番操作者とISOL当番管理者を定め、異常時に速やかに対処できる態勢を取ることになっている。
6.異常時の処置
異常事態発生の場合は、必要な応急の処置をとつた後、直ちにISOL当番管理者及びKUR当直運転主任に連絡し、処置を依頼する。詳細は「オンライン同位体分離装置(ISOL)の取扱い(要領)」に定められている。
7.設置場所
原子炉棟炉室(T-1)
8.提出書類
必須:実験・出張計画書、 KUR実験記録、KUR・KUCA照射使用記録、核燃料物質記録、
誘導放射能計算書(核燃料物質)、管理区域立入願、常時(臨時)立入者証交付願
不安定核種が注入された試料を棟外へ持ち出す場合:放射性同位元素取扱届(非密封)
9.装置担当者
谷口秋洋 taniguchi.akihiro.2r*kyoto-u.ac.jp (*→@)
10.その他
本装置の利用は、所員との共同研究が望ましい。
