1. 概要
E-3実験孔に設置されたニッケルミラー中性子導管により得られる高速中性子やγ線の混在が少なく直進性の高い低速中性子ビームを利用して、医学生物学、化学・薬学、物理工学等の研究分野に関する試料の即発γ線測定(PGA)を行うための装置である。
図1は E-3実験孔の概略である。全長174.5cmのインナースリーブおよび全長70.5cmのコースコリメータが挿入されている。インナースリーブと実験孔の間はパッキンにより気密が保たれている。また、インナースリーブには、全長約100cmの水シャッターが設置されている。コースコリメータはインナースリーブの中に挿入されているが、その間の気密は保たれていない。また、コースコリメータの中性子通路の部分(炉心側9.6cm×4.5cm、出口9.6cm×2.5cm)は水シャッターの役割も担っている。
図2はニッケルミラー中性子導管の概略である。本導管では、ニッケルをフロートグラスの表面に約200nm蒸着したニッケルミラーを用いている。中性子導管本体は炉室内に設置されているが、実験は炉室外の中性子導管実験室で行われている。

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図3は即発γ線測定装置の概略である。中性子導管により引き出された低速中性子(ほとんど熱中性子)を試料に照射し、この時発生するγ線を試料の横に配置されているGe半導体検出器で測定する。例えば、生物試料中の硼素濃度測定時は、478keVの硼素由来のγ線および2,220keVの水素由来のγ線を測定し、それらの計数の比から硼素濃度を評価している。
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2.特性
・試料位置での中性子束:1MW で4×105 cm-²s-1、5MW で2×106 cm-²s-1
・試料位置でのビームサイズおよび形状:1cm の正方形あるいは直径0.5cm の円
・測定時間:試料の量によるが、硼素濃度10ppm の場合、1MW で約10 分、5MW で約2 分
3.条件
・個体、液体、気体の試料の測定が可能である。液体、気体の測定にあたっては、飛散・拡散しないように容器等に封じ込める。
・マウス等の生体の測定も可能である。逃亡しないように対策を施す必用がある。
・試料を入れた容器で発生する即発γ線に注意する必用がある。硼素濃度測定の場合、写真1 に示すような標準テフロン容器を使用することを推奨する。
・標準テフロン容器に入れた試料あるいは同じ外寸のものについては、写真2 のサンプルチェンジャーにより複数試料の即発γ線測定を連続的に行うことができる。配置できる試料の最大数は25 個である。


4.取扱方法
「即発γ線測定装置の準備」、「ビームシャッターの開閉」、「即発γ線計測システム」、「サンプルチェンジャー」に分けて以下に示す。
詳細は、設備付近に置いてある各種「取扱マニュアル」を参照すること。
① 即発γ線測定装置の準備
・半導体検出器そばのホワイトボードに、検出器に液体窒素を補充した日付が記入されている。使用前に必ず日付を確認すること。日付から10日を過ぎている場合、設備担当者に速やかに連絡すること。液体窒素がない状態で測定装置を立ち上げると装置が故障する。
・半導体検出器に高圧を印加する(写真3参照)。表示が2,500になるまでダイヤルを右回しに回す。
・一連の測定が終了した後は、高圧をゼロにする。表示が0になるまでダイヤルを左回しに回す。
② ビームシャッターの開閉
・図3に示すように、導管の気密窓のすぐ後に濃縮6LiF製のビームシャッターが設置されている。KUR起動時で本設備を使用しないときは、ビームシャッターを閉じて中性子ビームを止めている。
・ビームシャッターの開閉は、写真4のシャッター制御システムにより行う。
・「シャッター開」ボタンを押すと、電磁石が下降してビームシャッターを磁力により吊り上げる。シャッターが全開になると、写真5のように「OPEN」表示が黄色く点灯する。
・「シャッター閉」ボタンを押すと、電磁石が切れてビームシャッターが重力に従い落下し、「OPEN」表示が消灯する。
・シャッター全開時に、ノイズ等により電磁石が一瞬切れて、シャッターが落下してしまうことがある。長時間利用するときは、テープで固定する等のシャッター落下防止策を講ずることを推奨する。



③即発γ線計測システム
・制御PCのデスクトップ上のアイコンMCA-3をクリックしてシステムを立ち上げる。
・File-Loadをクリックし、デスクトップ上に保存されているTemplate.mcdを選択して開く。
・硼素および水素からの即発γ線を観測するために、File->New Displayでウィンドウを1つ追加する。観測したい領域を拡大するために、スペクトル上で右クリックを押したままドラッグし、領域を設定する。Region->Zoomで拡大される。
・Template.mcdを開いた時点で硼素の即発γ線領域(478 keV付近)と水素の即発γ線領域(2220 keV付近)のROIが設定されている。ROI の情報を見るために、チャンネル表示上のバー(ROIは黄色、選択すると赤色)をクリックする。赤色になった時点でROIの情報を見ることができる。
・Action->Startをクリックすると計測を開始し、Action->Haltで計測を終了する。
・計測を終了した時点で、硼素および水素の即発γ線のROI情報からピークカウントを読み取る。

④サンプルチェンジャー
・サンプルホルダーに複数試料を設置した後、即発γ線計測システムMCA-3を立ち上げる。
・測定時間を決定する条件、例えば硼素からの即発γ線のピークカウント、水素からの即発γ線のピークカウントを設定する。MCA-3のOptions->Range,Presetで立ち上がるMCA Settingウィンドウ内ROI Preset右のテキストボックスに測定したいピークカウントを入力する(図5参照)。ROI右のテキストボックスには測定したい即発γ線のピークチャンネルの幅を入力する。LivetimeやRealtimeに測定時間(秒)を入力することも可能である。
・次に、各試料から得られる即発γ線スペクトルをファイルに保存するための設定を行う。MCA-3の File->Save asで立ち上がるウィンドウ内で保存先のフォルダおよびファイル名を入力する(図 6参照)。この時、ファイル名はdata-000などと000を最後につけておく。ファイルの種類はASCII Filesとする。続いて、MCA-3のOptions->Dataで立ち上がるウィンドウ内のSave at Haltおよびauto incr.の左のチェックボックスにチェックする。
・MCA-3のF7アイコンのクリックで自動測定が開始される。一つの試料が上記測定条件で終了した際に、即発γ線スペクトルの情報がファイルに保存され、次の試料に移動し、測定が自動で開始される。

5.異常時の処置
本設備での実験利用時に異常事態が発生した場合は、所内連絡者および装置担当者に速やかに連絡すること。必要に応じて、設備付近に置いてある各種「取扱マニュアル」を参照すること。
6.設置場所
中性子導管実験室(放射線管理区域内)
7.提出書類
KUR実験記録
実験・出張計画書、管理区域立入願
8.装置担当者、連絡先
櫻井良憲 sakurai.yoshinori.8n*kyoto-u.ac.jp
高田卓志 takata.takushi.6x*kyoto-u.ac.jp (*→@)
9.その他
・あらかじめ決定された年間スケジュールに従う利用を原則とする。
・年間スケジュールに従わない利用を希望する場合は、計画段階に先だって所内連絡者および装置担当者に相談すること。ここで、計画段階とは実験の3週間前に行うマシンタイムの調整段階のことである。
・本設備の連続利用時間は、最大8時間を原則とする。
・利用時間の短縮は、利用当日でも可能である。延長は原則として不可である。
・利用をキャンセルする場合はKUR制御室へ連絡し、KUR実験記録にキャンセルしたことを記載する。
